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インフラ整備の未来とミズベリング
ミズベリングをこれから取り入れようとする全国のミズベリスト、ミズベラー(東京ではミズベリスト、大阪ではミズベラー。マックとマクドみたいな)のためのミズベリングビジョンブック(仮称)を弊社で担当し絶賛執筆中です。
あらためて、ミズベリングという言葉がなかった4-5年間のことを思い出し、ミズベリングという言葉が纏ったアウラというか意味のポテンシャルを感じています。
ミズベリングはH社の会議室で2013年の12月頃にうまれました。言葉が生み出される前、水辺の情報発信のこのプロジェクトどのようなプロジェクトにすればいいか、会議室や水上の船や水辺のレストランで多くの回数を割いて行われてきました。ミズベの規制緩和で果たされる社会的役割がどんなことなのかということとそもそも可能性を開くということの価値をどう捉えるかということをしきりに話し合っていました。
僕は2003年ごろからずっとミズベをどうにかしたいと思い続けてきた側なので、規制緩和で可能性が広がったことはありがたいけれども、だからどうなの?と斜に構えていたところがありました。僕は、僕のようないままでよかれと思って社会に対してミズベのあり方を提示してきた側が報われるような仕組みを欲していたのかもしれません。いや、僕が報われたいと思っていたのかもしれません。
でも、プロデューサーの山名清隆さんや国交省の藤井政人さんはこの可能性の部分を広くたくさんの人に実感してもらうことを大変重要に思っていました。僕とは違う立場の人。市井で勝手にものごとを起こしている私とは立場が異なり、もっとちがうところ物事を捉えている人たちだからこそその重要さを認識されていたのでしょう。こちらをハイライトしてミズベリングはスタート。それまでの建築・都市計画分野でありがちな大学の先生が難しい話(よく聞けば簡単な話だったりする)を難しく話すスタイルはとらず、また、自らが実践的な取り組みをいきなりやるわけではなく、楽しくわくわくする演出で軽快におこない、コーヒーやお酒を片手に楽しむことや、素敵にデザインされたウェブサイトでミズベリングらしさをつくりあげてきました。
内容に関しては、規制緩和が行われたよ、という行政のウェブサイトにありがちな感じをできるだけ避け、それを伝えつつも、社会を自分がコミットしてつくりあげることそのものに楽しさや幸福感があることを伝えることや、縦割りを超えてあたらしい価値をつくりあげることの楽しさ、シビックプライド、などのコンテクストをウェブサイトでの情報発信し、またイベントを行うことを通してミズベリングという言葉自体が意味を帯び始めました。ポートランドのまちづくりや、会議を面白くするという社会的なムーブメント、ソーシャルデザインや、都市計画がどんどんアーバニズムへ移行していく流れと同調し、規制緩和のポテンシャルを広くたくさんの人たちに伝えることで、それらが持っていた言葉の意味をも取り込んだことで、ミズベリングはあらたな可能性に満ち溢れた言葉として社会的に定着することができたのだと思います。
どの役所に行っても「ミズベリング」という言葉が通用するようになっていて、かつそれがなにか新しいことにチャレンジするという意味を帯びている。このことがとてつもなくすごいんだ、と言ってくれたのは馬場正尊さんと忽那裕樹さん。
そして、この言葉が持つあたらしいことにチャレンジするスピリットや肩書きを超えて価値をつくりあげるオープンイノベーションのマインドが、日本全国にあらたなミズベ価値をつくりはじめています。
現状はまだ社会実験段階で実装されているものは少ないかもしれませんが、これから2年間で全国に魅力的なミズベの事業やインフラがたくさん生まれます。
しかもそれは、望まれてうまれてくるものばかりです。市民が創意形成する手法もミズベリングはコンテクストとして取り込んでいるからです。最初にミズベイング東京会議でグラフィックシェアを行ったのは、ですから期待のホープたちばかり。きっと多様な立場の人たちに大切に育てられていくことでしょう。
立場というのは人が社会を見る見方を完全に変えてしまいます。なぜそのような見方が必要になるのか、それはその人たちと仕事をすることでわかるようになる気がします。逆に、真剣に仕事をしないとそこは見えてこない。相手の立場に立とうと思っても、自分の立場を守ろうとすればするほど遠のくようです。役割を明確にすることで効率化を図ってきたこれまでのやり方と真逆のやり方です。それは自分自身と向き合って勇気をもって相手と対峙する。新しい仕事の向き合い方です。でもそれは、はてしない自分との戦いのはじまり。まさに人間力が問われます。最初に斜に構えていた自分の人間力の低さが、ミズベをよりよくするための障害になっていたとしたら、あのころの自分に戻って言ってやりたいです。「ミズベリングっていう言葉があってね・・・」と。
岩本唯史